メラノーマ(悪性黒色腫)に対する分子標的薬ビラフトビとメクトビと眼障害(SRD、ME、RVO, ぶどう膜炎)
メラノーマに対する分子標的薬である
- ビラフトビ(一般名:エンコラフェニブ) BRAF阻害薬
- メクトビ(一般名:ビニメチニブ) MEK阻害薬
が、2018年頃承認されたらしい。
まずは、難しいことを抜きにして、眼障害が結構おこるらしく、以下がおこることがあるらしい。
- SRD漿液性網膜剥離(網膜色素上皮障害) →内服数時間後~数日後に発症。ゆがみ。OCTで診断。継続投与しても、徐々に軽快することが多い。Grade2(←?)と判断すれば休薬を勧める。回復後再投与可能。
- CME嚢胞様黄斑浮腫(網膜障害) →中止、場合によってはトルソプト点眼 or ダイアモックス?
- ぶどう膜炎(原田病類似) →中止。もちろん、感染症などがないか、ぶどう膜全検は必要。感染を除外できたら、ステロイド点眼、STTA(マキュエイドテノン嚢下注射)、ステロイド内服。
- 網膜静脈閉塞症(BVO, CVO) →中止(ただし、これは、もともと有病率が高い(50歳以上で1-7%)疾患)
腫瘍形成に関与する受容体型チロシンキナーゼ経路
腫瘍で出てくる、増殖因子受容体には、以下のようなものがあるらしいです。
えっと、VEGFRも増殖因子受容体で、チロシンキナーゼ経路だったんですね。。。(アバスチンは、大腸がんに対する抗腫瘍薬でしたもんね。)
上図を見ると、
- HER2
- IGF1R
- PDFGR
- EGFR
- VEGFR
などがあるらしいです。
ビラフトビは、BRAF阻害薬
上図で、EGFR, VEGFR, 他の増殖因子受容体から、
Ras -> Raf1 -> MEK1 -> ERK
という経路があります。
このうち、RAFタンパク質には、ARAF、BRAF、CRAFがあり、メラノーマ(悪性黒色腫)には、BRAF遺伝子変異(V600EまたはV600K)が多いとのこと。
このBRAF阻害薬が、「ビラフ」トビ。覚えやすい。
詳しい経路については、以下が詳しいです。
https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/cancer9/
【いまさら聞けないがんの基礎 9】Ras/Raf/MEK/ERK (MAPK)シグナル伝達経路とは?
そういえば、ありました。大学のとき生化学で、リン酸化酵素(キナーゼ、kinase、かいねーす)多すぎてなんじゃこりゃって思った記憶があります。
- MAPKKK(MAPKキナーゼキナーゼ)
- MAPKK(MAPKキナーゼ)
- MAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)
メクトビはMEK阻害薬
MAPKシグナル伝達の図は以下の通り(!?)。
MEK阻害薬は、下図のMAPKKを阻害します。
MEK阻害剤と漿液性網膜剥離
WEB講演会で聞いたこと+αを以下に記載します。
- MAPK経路は、網膜色素上皮(RPE)細胞において重要な働き(上図のERK1/2がMAPK)
- MEK阻害剤は、MEK1/2(MAPKK)を阻害
- MEK1/2(MAPKK)を阻害されると、下流であるERK1/2(MAPK)が減少し、その下流のNrf2やVEGFAの活性が変化
- MEK阻害剤により、RPEの機能障害、バリア機能・ポンプ機能が障害されて、SRDが生じる
Pubmedで RPE, MAPKなど検索しましたが、よさげな論文を見つけることができませんでした。がっくし。まだわかっていないのか、それとも、基本的過ぎて、私が見つけられないだけなのか。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28709702/
Clinical and Morphologic Characteristics of MEK Inhibitor-Associated Retinopathy: Differences from Central Serous Chorioretinopathy
Ophthalmology. 2017 Dec;124(12):1788-1798.
→MEK阻害剤関連網膜症25例50眼の臨床像
がん遺伝子パネル検査
がん遺伝子パネル検査とは、次世代シーケンサーを用いた「がん関連遺伝子」変異を一度に調べる方法。
「パネル検査」という言葉、恥ずかしながら、初めて聞きました。
日本でも「がん遺伝子パネル検査」が2019年より保険適応とのこと。
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