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Caspase signalling controls microglia activation and neurotoxicity.

Nature. 2011 Apr 21;472(7343):319-24. Epub 2011 Mar 9.
Caspase signalling controls microglia activation and neurotoxicity.
Burguillos MA, Deierborg T, Kavanagh E, Persson A, Hajji N, Garcia-Quintanilla A, Cano J, Brundin P, Englund E, Venero JL, Joseph B.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21389984

グリア細胞について

http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/basic-glia.html#bbb

アポトーシス

http://www2.mfour.med.kyoto-u.ac.jp/~nagata/research/research.html

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1713127

110526

(最初に、ホワイトボードにmicroglia, neuronの図をかいておく。)

(1) inflammogen刺激により、microgliaが活性化

(2) microgliaがpro-inflammatory factor (これがneurotoxic )を放出

(3) neuronが死亡

カスパーゼシグナル伝達がミクログリアの活性化と神経毒性を制御する

microgliaは、骨髄由来の細胞で、中枢神経系の免疫担当細胞です。

通常は、脳組織内に不活性状態のramified microglia(分枝したグリア)として存在していますが、神経の損傷が起こると、細胞体の肥大化、細胞増殖を起こし、activated microgliaに変化し、活発に動き回って死んだ細胞を貪食したり、修復促進因子を放出したりします。

しかし、このmicrogliaが活性化しすぎると、pro-inflammatory factorsなどを放出し、神経毒性を呈することが報告されており、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患では、この神経毒性が関わっていることが知られています。

今回の論文で、筆者らは、マウスのmicroglia細胞、dopamine neuronの細胞の実験、AD,PD患者の脳の免疫染色により、microgliaの活性化の経路にcapase-8, caspase-3/7が関わっていることを証明しました。

裏ページの8番をご覧ください。

ご存知の通り、caspaseは、細胞にアポトーシスを起こさせるシグナル伝達経路を構成する、システインプロテアーゼです。

基質となるタンパクのアスパラギン酸残基の後ろを開裂します。

次に、上の7番の図をご覧ください。

今回の論文でわかったことは、この7番のシグナル伝達経路です。

microgliaの細胞膜表面のToll-Like Receptorにligandがくっつくと、caspase-8, caspase-3, PKCδが順番に活性化され、IKK/NF-kB pathwayを介して、炎症系の遺伝子の発現が促進され、INOS, TNF-α, IL-1βなどがmicrogliaから放出され、これらがneurotoxicに働き、近くにある神経細胞が死んでしまうという流れです。

では表ページのFigure1をご覧ください。

Figure1では、microgliaにinflammogenであるLPSをふりかけると、microglia内のcaspase-3が活性化されるが、microglia自体は死亡しないということを示しています。

Fig1-a

グラフの縦軸のDEVDase activityは、caspase-3/7の活性度を表しています。

microglia細胞に、LPSを加えると、caspase-3/7が活性化し、4個のアミノ酸配列D-E-V-Dを認識し、アスパラギン酸Dの後ろで、基質タンパクを切断しますが、

そのすぐ下のFig1-cでは、microglia細胞は、特に死んでいない(アポトーシスを起こしていない)ことが分かります。

caspase-3/7のinhibitorである、DEVD-fmkをさらに加えると、DEVDase活性は抑制されます。

一番右のSTSは、スタウロスポリンというdeath stimulusであり、PKCを阻害することにより、アポトーシスを誘導する薬ですが、LPSと比べて、DEVDase活性が非常に高くなり、この薬を加えた場合は、microglia細胞は死にます。つまり、アポトーシスを起こします。

Fig1-bは、microgliaにLPSを加えると、caspase-3が活性化する(切断される=活性化する)ことを免疫染色で示しています。

Fig1-dは、LPS刺激では、活性型PARP(活性型ポリADPリボースポリメラーゼ、アポトーシスの指標)はwestern blotで検出されず、アポトーシスが起こっていないことが示されています。

STS刺激では、活性型PARPが検出され、アポトーシスが起こっていることが示されています。

また、LPS刺激により、microglia(BV-2 cell line)が活性化し、丸い細胞が多い状態から、突起が出るような状態の活性化状態に形が変化するということを、Fig1efで示しています。

(in vivoでは、microgliaの不活性化状態は枝を伸ばしている状態ですが、BV-2 cell lineでは逆のようです???)

さらに、LPS刺激により、microgliaにおいて、iNOS、IKK-β(IkB kinase complex β)、ROS(reactive oxygen species、活性酸素種)などのpro-inflammatory factorの発現が上昇していることを示しています。

これらの遺伝子発現の上昇は、DEVD-fmk(caspase-3/7のinhibitor)により、抑制されることも示されています。

Fig2をご覧ください。

Fig2では、Fig1と同じことを、caspase-3/7のinhibitorであるDEVD-fmkの代わりに、Caspase-3/7のsiRNAを用いて示しています。

Fig2-c,d

p65は、図の7番の中にもありますように、NF-kBのsubunitです。
LPS刺激によりmicrogliaが活性化すると、p65がmicrogliaの核内へ移行しますが、siRNAにより、caspase-3を抑制すると、LPS刺激によるp65の核内移行が抑制されます。

Fig2-ef

LPS刺激したmicroglia細胞と、緑色に染めたdopamine細胞をco-cultureしています。

fig2eでは、LPS刺激を行うと、neuronの核が凝集して、neuronal cell deathが起こっていることが分かります。

microgliaの方に、capase-3, 7, 3/7両方のsiRNAを加えると、neuronのcell deathが抑制されます。

(METHODSを読むと、

(1) dopamine neuronを緑色に染める。

(2) 別の場所で、microgliaにsiRNAを入れる。

(3) dopamine neuronとmicrogliaを混ぜて、LPSを加えて、24時間後に固定して顕微鏡写真。

となっている。)

Fig2gは、microgliaのprimary cultureのLPS刺激により、炎症性サイトカインの放出が行われますが、caspase-3/7のinhibitorであるDEVD-fmkと、caspase-8のinhibitorであるIETD-fmk投与により、これらの炎症性サイトカインの放出の一部が抑制されることを示しています。

Fig3に行きます。

細胞をLPSで刺激すると、caspase-1が誘導されることが知られていました。

そこで、caspase-1 inhibitorである、YVAD-fmkも登場しています。

Fig3a

microglia細胞のLPS刺激により、DEVDase活性(caspase-3/7の活性)は上昇しますが、これは、IETD-fmk(caspase-8のinhibitor)により、抑制されますが、YVAD-fmk(caspase-1のinhibitor)では抑制されませんでした。

Fig3bcでは、microglia細胞のLPS刺激により、IETDase活性(caspase-8の活性)は上昇しますが、これは、caspase-8 siRNAにより、抑制されることが示されています。

同様に、capase-8の下流であるcaspase-3/7の活性は、caspase-8 siRNAで抑制されていることが、Fig3dで示されています。

efでは、LPS刺激によるiNOSの発現上昇が、caspase-8 siRNAで抑制されています。

Fig4をご覧ください。

Fig4では、capase-3/7がPKC-δを切断して活性化することにより、LPS刺激によるmicroglia活性化が起こることを示しています。

内容はFig3とほとんど同じですが、

Rottlerinは、PKCδ阻害剤です。

PKCδD327Aは、327番目のアスパラギン酸DをアラニンAに変換したタンパクで、capaseで切れなくなったものですが、このときも、LPS刺激によるmicrogliaのiNOS発現上昇が抑制されています。(Fig4gh)

裏ページのFig5に行きます。

Fig5では、in vivo(ラット)で、LPS刺激によるmicroglia活性化について実験を行っています。

abcでは、ラットの黒質にLPSを注射すると、microgliaにおいて、capase-8, caspase-3, OX-6(active microgliaのマーカー)の発現が上昇していることを、免疫染色で示しています。

Fig5defでは、LPSに加えて、DEVD-fmk(capase-3/7 inhibitor)を加えると、iNOS, TNF-α, IL-1βなどの炎症性サイトカインの発現が抑制されることをqPCRと、westernで示しています。

マウスにMPTPという薬を腹腔内投与すると、パーキンソン病のようになることが知られています。

Fig5gからは、MPTPを投与したマウスの黒質はmicrogliaが活性化していますが(iba1は、活性化microgliaのマーカーです)、MPTP腹腔内投与に加えてIETD-fmkの黒質内投与を行うと、microgliaの活性化が抑制されることが分かります。

Fig6をご覧ください。

最後に、ヒトのパーキンソン病患者の腹側中脳(ventral mesencephalon)、アルツハイマー病患者の前頭葉(frontal cortex)で、microgliaが活性化していることを示しています。

コントロールは心臓病で亡くなれた患者です。

CD68は、microgliaのマーカーです。

Fig6abでは、controlと比べて、PD患者の腹側中脳は、緑色の活性型caspase3がよく染まっており、それはmicrogliaのマーカーであるCD68と共染されます。

Fig6cdでは、microgliaの数自体は少し少ないですが、controlと比べると、活性型caspase3に染まる細胞の数も多いです。

以上まとめますと、パーキンソン病や、アルツハイマー病の神経変性疾患において、

1.inflammogen刺激により、microgliaが活性化

2.microgliaがpro-inflammatory factor (これがneurotoxic )を放出

3.neuronが死亡

という機序が考えられるということが示され、microgliaのcapase-3などをtargetとした新しい治療薬を考えられるのではないかという論文でした。

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caspase:細胞にアポトーシスを起こさせるシグナル伝達経路を構成する、一群のシステインプロテアーゼ。基質となるタンパク質のアスパラギン酸残基の後ろを開裂する。

(Cysteine-ASPartic-acid-proteASE)

システインプロテアーゼ:活性部位にシステイン残基をもつ蛋白質分解酵素。

LPS

DEVDase

<introduction>

Parkinson’s disease (PD)

Alzheimer’s disease (AD)

multiple sclerosis

microglia

TNF-alpha (tumour-necrosis factor alpha)

nitric oxide (NO)

IL-1beta (interleukin 1 beta)

neurotoxic

Toll-like receptors (TLRs)

lipopolysaccharide (LPS)

Gram-negative bacterial wallsのmajorな構成要素のひとつ。

TRL 4 のligand

IFN-gamma (interferon-gammma)

APP transgenic mice

caspase-1 : immue-mediated inflammationと関連あり。apoptosisとは関連なし。

pro-inflammatory cytokines

IL-1beta

IL-18

IL-33

●Fig1

BV2 cell : microgliaのcell line

LPS : lipopolysaccharide : グラム陰性菌の細胞壁の構成因子であり、TLR4のligand

caspase-3

caspase-3 cleavage

DEVD-ase : DOMeEOMeVDOMe-ase

caspase-3は、DEVDというアミノ酸配列を特異的に認識して、最後のアスパラギン酸(D)の後ろでタンパク質を切断する。

caspase-8は、IETDというアミノ酸配列を特異的に認識して、最後のアスパラギン酸(D)の後ろでタンパク質を切断する。

以下2つの図は、wikipediaより転載。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BC

clip_image002

(黄色い丸は、活性中心のシステイン残基)

clip_image004

カスパーゼカスケードには、

●ミトコンドリアからの刺激で、イニシエーター(カスパーゼ-9)→エフェクター(-3、-6、-7)の順に活性化される経路

●細胞膜表面の受容体からの刺激で、イニシエーター(-8、-10、-2)→エフェクター(-3、-6、-7)の順に活性化される経路

●小胞体からの刺激で、イニシエーター(-12?)→エフェクター(-3、-6、-7)の順に活性化される経路

●イニシエーターを経ずに、ストレス誘導分子が直接エフェクター(-3、-6、-7)を活性化する経路

が存在する。

LPS :リポ多糖。グラム陰性菌の細胞壁外膜に存在する。内毒素endotoxin。

エンドトキシンショック:グラム陰性菌の内毒素endotoxin自体および一酸化窒素(NO)による血管拡張と低血圧、血管透過性上昇により起きるショック(急性循環不全)。

DEVD-FMK : caspase-3/7 inhibitor Z

STS : staurosporine : death stimulusのひとつ。スタウロスポリン、抗生物質(臨床応用不可)。プロテインキナーゼの酵素活性を阻害することで、生理活性を示す。PKC阻害剤。アポトーシスの誘導に用いられる。

(蛇足)STS(Serologic test for syphilis)(梅毒の検査)とは関係ない。

Fig1-a

どうやってDEVDase activityを測定したのか?

m0046-2(Nature1995)。fluorometricallyに測定。(キットがある。)

http://www.invitrogen.jp/catalogue/molecular_probes/cell_bio_new/apoptosis/caspase.shtml

Z-DEVD-AMC基質は切断されると青色蛍光を発する。

PARP-1

caspase-3/7 nuclear substrate poly(ADP-ribose) polymerase

PARP

ポリADPリボースポリメラーゼ Poly(ADP-ribose) Polymerase

[edit]Role in cell death

Upon DNA cleavage by enzymes involved in cell death (such as caspases), PARP can deplete the ATP of a cell in an attempt to repair the damaged DNA. ATP depletion in a cell leads to lysis and cell death. PARP also has the ability to directly induce apoptosis, via the production of PAR, which stimulates mitochondria to release AIF. This mechanism appears to be caspase-independent.[4]

IkB kinase copmlex β(IKK-β)

inducible nitric oxide synthases (iNOS)

reactive oxygen species (ROS) formation

LTA

PamC3sk4

IFN-γ

pro-inflammogens(LPS, LTA, PamC3sk4, IFN-γ)

Fig2

nuclear factor kB (NF-κB)

NF-kBの活性化と核移行は、LPSによるmicrogliaの活性化のkeyである。

DEVD-fmk : caspase-3/7 inhibitor

IETD-fmk : caspase-8 inhibitor

IL-1β

IL-4

IL-10

IFN-γ

IL-2

IL-5

IL-12

Fig2-ef

microgliaとdopamine neuronのco-cultureはどのような手順で行ったのか?

Fig3

YVAD-fmk : caspase-1 inhibitor

potential capase-8 substrates : Bid, HDAC7, RP1

rottlerin : PKC-δ inhibitor

Fig5

iNOS

TNF-α

IL-1β

IETD-fmk

DEVD-fmk

rottlerin

MPTP

mouse model of PD

sham (n.)偽物 (adj.)偽の、見せかけの、仮病の

IbaI : reactive microgliaのマーカー

Fig6

caspase-3

cleaved caspase-3

caspase-8

cleaved caspase-8

CD68 : microgliaのマーカー

PD患者のventral mesencephalon

AD患者のfrontal cortex

Discussion

pro-inflammatory stimuli

LPS

LTA

PamC3sk4

IFN-γ

caspase3/7

IKK/NF-kB pathway

PKC-δ

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