『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」』(2023年)を読んで子育てについて悩むが、結局やることは今までと変わらないという結論にいたりそう
Googleでお勧めされた記事に、この本の宣伝があったので、Kindleでサンプルをダウンロードしたら、「愛着理論」とかその他、知っている子育て関連エビデンスに対し批判的?な感じだったので、そのまま購入して読んでみました。行動遺伝学に関しては、過去に、「無理ゲー社会(2021年)」を読みましたが、「遺伝率」「共有環境」「非共有環境」の意味がさっぱり理解できず、この本を読むと、もう少し理解できるかなと期待して読んでみました。
この本を読んで一番衝撃を受けたこと
エビデンスはまだ自分では確認していませんが、以下の文章を読んでギクリとしました。
知能の遺伝率が年齢とともに上がるのは20歳くらいまでで、(中略)。
幼児期は親の育て方や家庭環境の影響が比較的大きく、遺伝の影響が顕在化していませんが、成長するにつれて自分の遺伝的素質に合わせて環境を選択したり(遺伝と環境の能動的相関)、友人やまわりの大人がその子の性質や能力に合わせた関わりをするようになる(遺伝と環境の誘導的相関)機会が増えることで、本来の遺伝的な素因が前面に出てくるのではないかと思います。
運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」(2023年)
この本を読んでよかった思った一文
結局、両親から半分ずつ受け継いだ「ゲノム配列(ほぼ遺伝子と同義)」でヒトの行動が決まってしまうのであれば、環境に自分をあわせるのではなくて、自分にあう環境を探して、それに応じた知識を習得すれば、幸せになれる確率が上がるのではないかという以下の救いの一文が心にささりました。これ、不登校の問題とも関連していると思いました。例えば、小学生の子どもが不登校になったら、環境(小学校)に子どもをあわせる(無理やり登校させる)のではなく、子どもにあった環境(フリースクール、塾、その他)を合わせるという解決策をとる方が、行動遺伝学の観点からは正しいし、子ども本人も親もハッピーになれるのではないかと思いました。
だからこそ、思春期後半で安定してきた形質(パーソナリティ)を手がかりに、自分の特性を活かせる環境を探すべきだと思います。環境に無理矢理自分を合わせようとするのではなく、特性に合った環境を探して、それに応じた知識を習得する。あるいは、自分の遺伝的な素質に合うような環境を自分から創り出す。そうすることで、人生における成功確率はグッと高くなるはずです。
運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」(2023年)
橘玲「無理ゲー社会」(2021年)
無理ゲー社会(2021年)で紹介されている行動遺伝学のメタアナリシスの論文(Polderman et al., Nature Genetics. 2015)では、39か国の1400万以上のペアの双生児を対象とした1958年から2012年までの2748件の研究をメタ分析したもので、「パーソナリティ(性格)」「能力」「社会行動」「精神疾患」における遺伝率、共有環境、非共有環境の影響を推計した結果、
「共有環境」(家庭環境=子育て)の影響力が、「やる気」で0%、「集中力」で2%
という衝撃的な結果であり、これをもって、筆者の橘玲氏は、
「やる気」や「集中力」は子育てとはまったく関係ないようだ。
とコメントしていて。びっくり仰天した記憶があります。(このコメントが正しいのかは私にはさっぱりわかりませんが、少なくとも、個人の「やる気」と「集中力」を子育てで上昇させようとしても、厳しそうということは感じました。)
行動遺伝学Behavioral Geneticsとは
ChatGPT3.5と4.0(リートン)、Bing、Bardに聞いてみました。プロンプトは以下です。
行動遺伝学について教えてください。特に、遺伝率、共有環境、非共有環境という言葉の定義についても、高校生でもわかるように説明してください。
<ChatGPT-3.5(リートン)>
<ChatGPT-4(リートン)>
<Bing>
なんか言葉がバグっています。不安になりますが、リンク先が書いてあるのが、とてもよいです。
<Bard>
なんか回答が長いし、個人的には4つ中で一番微妙な回答です。2023年時点では、個人的には、BardよりもChatGPTやBingの方が使いやすいです。まあ、1年後には、Bardも劇的に使いやすくなっているのかもしれません。
「運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」(2023年)」ともあわせて、私なりにまとめてみると以下のようになります。(間違っている可能性あり)
行動遺伝学:遺伝的要因が、人間の行動や性格にどのように影響するかを調べる学問。現代では、遺伝的要因は、主にゲノム(遺伝子を含む)という塩基配列がメインであると考えられている。
行動遺伝学では、個人差を遺伝、共有環境、非共有環境で説明する。
共有環境と非共有環境は、行動遺伝学において、方程式から算出される統計的な値
共有環境:環境要因のうち、家族を類似させる要因の効果の総体を共有環境という。家庭間で異なる環境の効果。兄弟姉妹や、双生児など、同じ家庭で育った人が共有する環境のこと。遺伝以外で家族を類似させている要因。家族の教育方針や経済状況、文化的背景など。地域や学校といった家族が共有しうるさまざまな要素を含む。
非共有環境:環境要因のうち、家族を類似させない要因の効果の総体を非共有環境という。家庭内で異なる環境の効果。学校や友人、地域社会などのうち、家族内で異なるものは、非共有環境となる。
遺伝率:ある形質(例:集中力)についての表現型(観察できる特徴)の「分散」、つまりばらつき具合が、遺伝や環境によってどの程度説明されるかということを説明する値(←???)。遺伝の個人差に対する相対的な寄与率を算出したもの。こちらはまだ正直、理解できていません。今後の課題として、、、
参考文献
- 日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書) 2016
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません