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マンガ『資本論』の労働者が現代の『ギグワーカー』にしか見えない

2020年1月3日

18世紀半ばから19世紀にかけておこったイギリスの産業革命。『資本家』が『労働者』を食いつぶす時代でした。それについて、ものすごくわかりやすく記載されているのが以下の本です。

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剰余価値とは

マンガ『資本論』 の中で、ビジネス指南役の人物が、以下のように言っています。

パンという商品は、無数の人間が買ってくれる。
そのため、一人に買ってもらえなかったとしても、また別の人間に買ってもらえばいい。

だが、『労働力』という商品は『資本家』という特殊な客のみが買う。
資本家しか買わない商品である以上、その価値は資本家が『自由に』決められる。

『剰余価値』=『労働力が生み出すお金』-『賃金』( -『経費』)

ということのようです。
剰余価値を最大化するために、 資本家は、

  • 労働時間を長くする
  • 賃金を下げる

といったことを、行うことになります。

参考: https://vicryptopix.com/capitalism/

この『自由に』というところが、労働基準法などの法律で制限され、
『労働者』が守られてきたのが、1950年~2000年くらいまででしょうか?

マンガで学ぶ労働条件

日本では、『労働基準法』(1947年施行)により、労働者の権利が守られていることになっています。たとえば、

  • 仕事中の身の安全
  • 有給休暇
  • けがをしたときなどの労災
  • 仕事がうまくいかなかったときの客に対する補償
  • 健康保険料や、年金保険料の半分を企業が支払う

などの権利が、法律で保障されています。労働基準法の内容については、以下の、厚生労働省のサイトがわかりやすいです。
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/manga/

『好きなときに、好きなだけ働ける』という言葉にのせられるギグワーカー

会社員であれば、毎朝定時で出勤して、嫌な上司にこびへつらい、夜遅くまで残業して、、、というのがお決まりの文句です。それに対し、『働き方2.0vs4.0 不条理な会社人生から自由になれる』などの本では、『会社員』に対して、

これからは、好きなときに、好きなだけ働けるギグ・エコノミーがイケてるぜ!

みたいなことを言って、個人事業主になるよう、けしかけます。

しかし、好きな時に、好きなだけ働ける『個人事業主』という立場は、『労働者』ではないので、当然、上記の労働者の権利がありません(再掲します)。

  • 仕事中の身の安全
  • 有給休暇
  • けがをしたときなどの労災
  • 仕事がうまくいかなかったときの客に対する補償
  • 健康保険料や、年金保険料の半分を企業が支払う

イギリスのUberタクシーで働くギグ・ワーカーのほとんどは、仕事の裁量権(自由)はほとんど無く、仕事がないリスク、経費などを『個人事業主』として押し付けている現状を、『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した~潜入・最低賃金労働の現場~』が、わかりやすく記載していました。

イギリスのUberタクシー運転手の実際

アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した~潜入・最低賃金労働の現場~』 によると、2017年現在、Uberタクシー運転手をする『個人事業主』たちは、以下のような状態だそうです。

  • Uberタクシーで働くために必要な運転免許を得る手続きは3カ月
  • 2017年頃の時点で、Uberタクシー運転手希望者は非常に多く、試験を受けるために30日間待つ
  • 試験を受けていた人のほとんどは、移民1世または移民2世
  • 免許申請のための費用は432ポンド(1ポンドは約150円なので、約7万円でしょうか。)

なお、こちらの記事によると、移民の出身国トップ5はポーランド、インド、パキスタン、アイルランド、ドイツだそうです。

で、実際にUberタクシー運転手として働き始めると、個人事業主にも関わらず、Uberからはかなりの制約をかけられ、運転手は、まるで『Uberの労働者』のような感覚に陥るそうです。

  • 製造から8年以内の車を使うというルール
  • UberアプリをONにすると、仕事を開始するという合図
  • お客からタクシーの注文が入ると、スマホでアラーム音が鳴り、15秒以内に仕事を受けるか解答する
  • 待ち合わせ場所に行き、客が着席するまで、Uberドライバーは行き先を知ることはできない(お客を乗せるまでUberドライバーが運賃を予想することができない。)
  • 乗客のフルネームその他の情報は、Uberドライバーには分からない
  • Uberはドライバーに対し、乗車リクエストの80%を受けいれなければ、『アカウント・ステータス』を保持しないと通告
  • Uberドライバーが3回連続で乗車リクエストを拒否すると、自動的にアプリが停止する場合がある
  • 強制ログアウト後は10分間はアプリにログインできず、仕事を受けることができない
  • ドライバー評価システム、乗客評価システムがあるが、乗客がドライバーを評価するかどうかを決める前に、ドライバーが乗客に何点をつけたのかを確かめることができる
  • ドライバー評価が4.4点以下(5点満点)になると、ドライバーにペナルティが出る
  • 『Uber POOL』という相乗りシステムがあり、乗客は相乗りすることにより一人で乗るよりも乗車料金を安く抑えられる。 『Uber POOL』 ではドライバーが受け取る額が減ってしまい、また、相乗りの都合上、乗客同士がけんかをしたりトラブルを起こすことが多いが、上記のルールがあるために、事実上、ドライバーは『Uber POOL』を拒否することができない

つまり、

いったんUberドライバーがアプリにログインしてしまえば、どの仕事を引き受けるかについてドライバーに選ぶ権利はほぼ無い

といった、『個人事業主』なのに、働き方をUberの厳重管理されているといった具合らしいです。

もちろん、乗客が、『安くタクシーに乗れる』ということはとてもよいのですが、その一方、『納税者』としての乗客は、Uberを利用することによって間接的に損をしている可能性があると、イギリスの市民助言局(Citizens Advice)は以下のように指摘したそうです。

『46万人が誤って自営業者として分類されている疑いがある。これによって、税収や雇用主による国民保険への支払額が減るため、納税者に年間最大で3億1400万ポンド( 1ポンド = 約150円)の負担を強いている可能性がある。』

https://www.citizensadvice.org.uk/about-us/how-citizens-advice-works/media/press-releases/bogus-self-employment-costing-millions-to-workers-and-government/

ギグ・エコノミーという経済形態

引き続き、 『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した~潜入・最低賃金労働の現場~』 に記載している一部をまとめ、私の個人的見解を追記します。

ギグ・エコノミーとは、フリーランスの単発の仕事(ギグ)によって成り立つ労働市場です。依頼されるのは出来高払いのフレキシブルな業務で、スマートフォンのアプリを通して割り振られることが多いそうです。

ギグ・エコノミーの参加者は朝ゆっくりと目を覚まし、いつでも好きな時に『ギグ』(単発の仕事)に参加する。同じように、仕事が終わればすぐさまオンライン上から姿を消すことができる。

ギグ・エコノミーという経済形態は、2008年の世界金融危機後に拡大した。英国の自営業者は、2008年の380万人から、2016年には470万人に増えた。その時期と一致して、スマホアプリを通して、Uberタクシー運転手などのギグ・ワーカーが増えている。

それまでは、

企業 → 労働者を雇用(最低賃金、有給休暇、雇用契約など、労働者が法律によってま守られる)

という形態であったものが、

企業 ←→ ギグ・ワーカー(個人事業主扱いなので、企業はコストを大幅に抑えられる)

ということだそうです。顧客にとっては、 少なくともサービス開始当初は、

『タクシーを安価にすぐに呼ぶことができる』

というのがメリットです。Uberタクシーが普及するまでは、イギリスのタクシーといえば、道端で探しても全然つかまらないし、また料金も、Uberタクシーと比べて割高であったとのことです。だからこそ、Uberタクシー(をはじめとするギグ・エコノミー)が爆発的に普及したのでしょう。

しかし、なぜ安くなるかというと、

タクシー運転手(労働者)が、Uberタクシー運転手(個人事業主)に置き換わることで、タクシー会社(今回はUber)は、 最低賃金、有給休暇、雇用契約その他のコストを抑えることができる

から、安くて便利なサービスを提供できることは間違いなさそうです。

2019年頃から世界各地でギグエコノミーに対して法規制が始まる

見かけ上の『個人事業主』に見えるギグワーカーを守るという名目で、以下のような動きが出てきています。

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO50002320Z10C19A9EA2000?s=5

ギグワーカーに安全網、ウーバー運転手は従業員
2019年9月19日 19:49

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57919

https://www.businessinsider.jp/post-190795#cxrecs_s
内戦で100人以上の殺害に関与か? ソマリアの元軍司令官、アメリカでウーバーのドライバーをしていた
Bill Bostock
May. 17, 2019, 10:45 AM

日本ではUber Eatsが広がりつつあるが

上記のイギリスのUberタクシーと同様の状況となっているのではないかと思います。

  https://www.noshift.work/ubereats/reviews/review

https://www.j-cast.com/2019/10/07369478.html

https://news.biglobe.ne.jp/economy/1118/jbp_191118_9354477568.html

https://www.noshift.work/ubereats/reviews/sunrising
やって分かったUbereatsの問題点
noshift 2018.04.12

https://delivery-hack.com/tokyo-change/

【悲報】Uber Eats(ウーバーイーツ)が東京での報酬引き下げを実施【激怒】

2019年11月22日 2019年12月6日

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